文学作品でたまに目にする「猩紅熱」。
とても恐ろしい病気として描かれることが多いですが、今でも猩紅熱に苦しんでいる人はいるのでしょうか。
そもそも、なぜ「猩紅熱」という名前が付けられたのでしょうか?
今回は、猩紅熱という病気のあれこれについてご説明します。
猩紅熱とはどんな病気?
猩紅熱は、皆さんも聞いたことがあるはずの溶連菌感染症の一種です。
溶連菌にはA群、B群、C群……と、たくさんの群がありますが、感染者の9割がA群によるものだそうです。
猩紅熱もこのA群溶連菌に分類され、発熱、咽頭炎のほか、
菌が出す毒素によって全身に赤い発疹が出るという特徴があります。
昔は治療困難な病気とされていましたが、抗生物質が開発された現在では、
病院で適切な治療を受ければ命の危険はまずありません。
感染力が非常に高い病気として扱われますが、
熱が下がってしまった後は感染力がなくなるため、普段通りの生活を送っても問題ありません。
ただ、熱があるうちは感染力が高いため、看病する人や家族は注意しましょう。
猩紅熱は治療法が確立してからも1999年まで法定伝染病として扱われていたため、
保健所に届出するなどの手間を省く目的で「溶連菌感染症」と診断されることが多かったそうです。
そのため、現在では、猩紅熱という名前はほとんど使われなくなっています。
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名前の由来やドイツ語名は?
ところで、猩紅熱という名前はどこから来ているかご存知でしょうか。
「猩々」という名前を聞いたことがありませんか?
猩々というのは、全身が赤い猿のような架空の動物の名前で、能の演目などに登場します。
この架空の生物のイメージから、「猩=赤い色」という意味で使われるようになりました。
つまり猩紅熱とは、身体が発疹で真っ赤になるありさまを指して付けられた名前なのです。
面白いことに、ドイツでもこれと似たような名前を付けられています。
ドイツ語で猩紅熱は「Scharlach(シャルラハ)」と呼ばれますが、
このドイツ語を英語にすると「scarlet(スカーレット)」、つまり鮮やかな赤色を指す言葉になります。
ドイツでも恐らく、患者のその見た目からこのような名前が付けられたのだと推測されています。
物語にあるように、失明することはあるの?
猩紅熱は、なぜか文学作品に多い印象があります。
特に、若草物語や赤毛のアンなどのアメリカ文学では、物語のキーワードとも言えるような印象的な場面で登場します。
これは、開拓時代~1950年あたりまでは
アメリカやヨーロッパでは猩紅熱で命を落とす人(特に子供)が多かったことが背景にあります。
これらの物語の他にも、猩紅熱のせいで聴覚を失ったとか、失明したなどのエピソードが見られます。
「大草原の小さな家」のメアリーも、幼いころの猩紅熱が原因で視力を失うという話がありますね。
かのヘレン・ケラーも、猩紅熱から髄膜炎となり、聴力と視力を失ったとされています。
実際に、猩紅熱による髄膜炎や結膜下出血で失明するケースはあるそうです。
現在では猩紅熱(溶連菌感染症)の治療が進んでいるため、
治療を受ければ聴力や視力を失うことはほとんど無くなりましたが、
菌自体は当時と同じもののため油断は禁物です。
現代日本での猩紅熱対策
猩紅熱、つまり溶連菌感染症には予防接種が無いため、
予防のためにはうがいや手洗い、マスクをして外出するなどの方法を取るしかありません。
看病する人もマスクを着用して接するなどの配慮をしましょう。
もし、溶連菌感染症の疑いが出たら、すぐに病院へ。
診察後は抗生物質を出されるので、これを欠かさず飲みましょう。
そして、10日~2週間後に完全に体内から溶連菌がいなくなっているかどうか、
合併症を起こしていないかを調べるため再び診察を受けます。
溶連菌感染症は薬で治る病気ですが、逆に言うと薬が無ければ完治しません。
疑いがあれば、重症化する前に必ず病院に行きましょう。
まとめ
猩紅熱という病気の由来や、登場する物語についてお伝えしました。
やはり猩紅熱はアメリカ文学で出番が多い病気という印象を受けます。
ハウス食品劇場でたまに聞く猩紅熱って今でいう溶連菌感染のことだったのか…知らなかったわ
— 朱理☆諮問探偵S4薄目組 (@syuri1982) October 14, 2016
そういえば、昔放送されていたハウス世界名作劇場でも「猩紅熱」という名を聞いたような気がします。
恐らく、若草物語のアニメですね。
猩紅熱に限らず、文学作品では不治、もしくは難治の病をモチーフにすることがよくあります。
例えば、結核などは、猩紅熱と同じかそれ以上に文学作品に出てきますよね。
これはやはり、重い病に冒されたという状況を介してされる心理描写が、
見る者の心に響きやすいせいではないでしょうか。
いつの時代も、健康のありがたさを噛みしめ、
病に苦しむ人を労わるということは大切なテーマの一つということでしょう。